サーファーという人種の人たちは、どうやら四六時中サーフィンのことばかり考えているようです。下手すりゃ、仕事でサーフィンに行けない日でも波チェックしてたりします。
これは『中毒』以外の何物でもないですね。
他のスポーツと比較しても、サーフィンの中毒性はちょっと異常なレベルです。そういう意味では、サーフィンというのは一種の麻薬のようなものかもしれません。
今回は、サーファーがなぜここまでサーフジャンキーになってしまうのか、ということを解説してみます。
一番の原因はドーパミン
あらゆる中毒や依存症の原因は、ドーパミンという報酬系の神経伝達物質の過剰分泌です。
『報酬系』と言うくらいだから、自分に何らかの『ご褒美』が与えられた時に分泌されます。サーフィンの場合、このご褒美が波に『乗った時の快感』だと言えますね。
サーフィンというのはあらゆるスポーツでも、群を抜いて難しい部類に入ると思います。
サーフィンに挑戦する人が10人いるとすれば、残るのはせいぜい2〜3人だと言われています。
いろんな壁をクリアして自力で掴んだ波は、まさにサーファーにとってのご褒美なのです。
モチベーションのクルーズコントロール状態
波乗りの快感は脳に記憶され、それが次の波乗りへと駆り立てます。
サーファーは、誰かに褒められるわけでもないのに早起きして海へ出かけたり、雪の降りしきる真冬の海にさえも入って行きます。時間がある時はYouTube でターンの仕方を研究したり、サーフムービーを観たりして過ごすでしょう。
ドーパミンは前頭前野を興奮させ、意欲的にさせる物質
『やる気』とドーパミンは密接な関係があると言われていますが、サーファーの場合、放っておいてもサーフィンのことばかり考えてしまう、モチベーションのクルーズコントロール状態になっているのです。
客観的に見て、これはもうパッション(情熱)と呼んでも差し支えないですね。
ちなみに、サーフィンするつもりで出かけたわけではないのに、ドライブ中に良い波を見つけると、それだけでエキサイトしてしまったなんていう経験は、サーファーなら誰しもが持っていると思います。
サーファーの脳内に、どれだけ強く波乗りの快感がアンカリングされているのかがわかりますね。
その効き目はモルヒネの6倍以上
実はサーフィンによって過剰分泌される神経伝達物質はドーパミンだけではありません。
ランナーズハイで知られる脳内麻薬、エンドルフィンもドバドバ出ていて、その効果はモルヒネの6.5倍にもなるそうです。
サーファーはもれなくランナーズハイ経験者
一本良い波に乗っただけで、それまでの疲れが吹っ飛んで、気分が高揚して一気にパドルが楽になることってありますよね?
これ、長距離走で言うところのランナーズハイの状態です。
サクッと言っちゃってますけど、これってかなりすごいことです。
小中高とみんな体育の時間に長距離走を経験したことがあるかと思いますが、その中でランナーズハイを経験したことがある人ってどれくらいいるのかと言うと、ほとんどいないはずです。
それなのに、サーフィンとなるとほぼみんなランナーズハイ経験者になってきます。
エンドルフィンという鎮痛剤のリスク
エンドルフィンは言ってみれば鎮痛剤です。つまり、本来の感覚を忘れさせるわけです。
本当は苦しいはずなのに苦しくない、疲れているはずなのに疲れていない、そう脳が勘違いしている状態を作り出します。
良い波に乗ると気分が高揚して、「もっと、もっと」という気持ちになりますが、この時、身体には体感以上に負荷がかかっているということを頭の片隅に留めておいた方がいいかもしれません。
サーフィンと永く付き合っていくためにも、自分の身体に耳を傾けることは忘れないでいたいですね。
海上がりの一杯とセロトニン
海から上がって着替えを済ませて、一杯のコーヒーでも飲みながら満足感に浸る。サーフィンで幸せを感じる瞬間の一つです。
この時、脳内では「しあわせホルモン」と言われる『セロトニン』が多く分泌されています。
セロトニンはドーパミン、ノルアドレナリンで興奮状態にある脳をクールダウンさせて、自律神経を整えてくれる脳内ホルモンです。
セロトニンが不足すると自律神経のバランスを崩したり、『うつ』になったりするみたいですが、サーフィンがそういった心の調子を整える役割も担ってくれているところからも、『スポーツ』や『趣味』という言葉で一括りにできないものであるということは、多くのサーファーに同意してもらえるはずです。
サーフィンが趣味やスポーツといった枠組みを超えて、しばしば『ライフスタイル』と表現されるのも頷けるところですね。
サーフィンライフという至福の生き方
Surfing is the most blissful experience you can have on this planet ,
a taste of heaven.
「サーフィンはこの地球上で最も幸せな体験だ。
それはまるで天国にいるかのようだ。」
これは認知科学者のジョン・マッカーシーの言葉ですが、サーフィンはまさに脳内麻薬天国ですね。
まあ、『脳内麻薬』とは言うものの、これは困難を乗り越えて自分の力で勝ち取ったご褒美ですが。
サーファーがサーファーであるための条件
サーファーの間では、『サーファーの定義』が話題になることがあります。
・テイクオフできたらサーファー
・横に行けるようになったらサーファー
・コンスタントに海に通っていたらサーファー
などなど。
いろんな意見がありますが、僕個人としては『その人の中にサーフィンに対する中毒性があるかどうか』を一つの定義としてもいいんじゃないかと考えてます。
「わかっちゃいるけどやめられない」状態です。
サーフィンにおいては、
です。
そして、このパッションが本格的に爆発するのが、多くの場合、初めて横に行った時だと思います。
なので、『横に行けるようになったらサーファー』という定義は有力かもしれませんね。
幸せなサーフィンライフを送るために
「サーフィンと出逢っただけで、人生は半分成功したようなものだ」
って言葉を耳にしたことがありますが、確かにサーフィンは人生を豊かなものにしてくれます。
これだけ快楽ホルモンや幸せホルモンが出ているんだから当然と言えば当然ですね。
ただ、一つだけ。
その中毒性から、サーフィンを絶対視しちゃっているサーファーって結構多いように思います。
でも、
「サーフィンこそが全て」
「サーフィンさえできていればそれでいい」
という考えはちょっと危ういんじゃないかと感じてます。
絶対視しちゃうと、客観性を失います。
実際、サーフィン第一主義を貫いて家庭崩壊しちゃった人を僕は何人か知っています。
1953年のことです。カナダの大学で、脳に電極を埋め込まれたネズミがレバーを踏むと、ドーパミン回路が刺激されるという実験が行われました。
レバーを踏むことで快感が得られることを知ったネズミは寝食も忘れて、産まれたばかりな子を放置してまでも、死ぬまでレバーを踏み続けたそうです。
誤解を恐れずに言うなら、「サーフィンさえできていればそれでいい」という生き方は、このネズミたちと何ら変わらないように思います。
僕らは理性を持った人間です。
願わくば、サーフィンと共に客観性を育て、自己成長とともに幸せな波乗り人生を送りたいですね。